ONE OK ROCKの2年ぶりのアルバム「Eye of the Storm」
そのタイトルが物語るように、今までのバンドのど真ん中に穴をぶっ刺して、新しい風を巻き起こして新しい仲間を巻き込みながら、新しい景色を見に行く。そんな姿勢を存分に感じさせられる作品だ。
日本のロックシーンを勝ち上がったワンオクが、世界に進出して音楽を鳴らすという流れは今に始まったことではない。
1作ごとに海外の足音が近づいているのが分かるように、夢と野望を現実のものにするべく変化をしてきた。
にしても、今作で見せた変化はとてつもなく大きい。
ワンオクが初めて海外で作った「35xxxv」から前作「Ambitions」への変化が100→1000だとしたら、「Ambitions」から「Eye of the Storm」への変化は1000→10000、もしくはそれ以上の劇的な変化だと思う。
ゆえに、色んな意見が渦巻いて多くの音楽リスナーを巻き込んでいる。
日本の音楽が好きなリスナーにとっては洋楽みたいで嫌だとか、逆に日本の洋楽リスナーにとってはありきたりだとか。いやいやそんなこと無いだろとか。
まぁそんなことは承知の上で作っているのだから、愛のない批判的な意見はかすり傷にもならないだろう。
洋楽をあまり聴かない自分としては、この曲達がありきたりなのかどうかもイマイチわからず、ただただ新鮮な音楽体験だったし、普通にカッコ良いと思った。
いわゆるバンドサウンドは殆ど聴こえてこないけれど、今まで聴いてきた歌声があって、今まで聴いてきた音楽を作ってきた人達が作った音だからスッと入り込んで来たのだと思う。
裏を返せば、全く同じ曲でもアーティストがONE OK ROCKじゃなかったら聴くことはなかったかもしれない。楽曲単位で語るには自分の中に文脈がなさ過ぎるから。
だけど、バンドが大きくなっていくのを見てきたファンにとってはきっとカッコ良いと思えるアルバムだと思う。
今までONE OK ROCKが歩んで来た道のり、今メインの拠点に置いているアメリカでの活動、そしてこの先にある目標があるからこそ、ここまで振り切れた作品が生まれたと思うし、その振り切り度合いも含めて評価したい。
日本から世界に飛び出し、海外の音楽シーンに揉まれながらも馴染んでいくのは、世界を舞台にONE OK ROCKを鳴らすための通過点にすぎない。
“残された時間は多くない” 理想を掲げた正攻法
バンドサウンドを脱して、曲ごとにプロデューサー、トラックメイカーを迎え入れて(むしろワンオク側が迎えられたと言えるかもしれない)アルバムを作り上げたのは、日本じゃなくてアメリカのマーケット/ヒットチャートで戦うのかどうか、という問いに対する答えでもある。
向こうのやり方に反発しながらも身を委ねて、その変化を受け入れていった。
と言葉にするのはあまりに容易くて、実際はこちらが想像するに耐えない、ついていくのに必死だった環境に身を起き続けているはず。
だって昨年はアメリカ、ヨーロッパを中心に年間100本ペースでライブを行っていたのだから。日本のライブバンドもビックリのストイックさだ。
そんな世界の荒波に揉まれながら、まさにバンドにとって”変化”の意欲作「Change」を1年前に先行リリース。
日本に凱旋してはドームツアー、オーケストラツアーと進化の片鱗を少しずつ見せてきた。
”やり続ける体力と、こんだけお金をかけてできたりすることに関しては、リアルに寿命があるわけですよね”
– ROCKIN’ON JAPAN 3月号 ONE OK ROCKインタビュー
もちろん日本での成功体験が海外で通用するわけもないし、世界で通用するまでの道のりは日本のそれよりも遥かに険しいし、年齢的にもいつまでストイックな活動が出来るかわからない。
理想を掲げた現実主義。いつまでやりたいようにやれるかわからないからこそ、レーベルの趣向を汲み、海外のアーティスト活動の”型にはまる”選択肢を取った。
彼らとって1番の正攻法で「無駄に出来る夜は残されていない」と歌うTakaさんの姿に、日本のリスナーは何を思うか。
はみだして、なじんで、はみだせ
“いろんなことに挑戦して、バンドとして我慢の時期だったんじゃないかなと思います。”
ONE OK ROCK、フルオーケストラと共に新たな世界を城ホールで構築 – 音楽ナタリー(https://natalie.mu/music/news/306378)
日本で最後に行われたライブで、Takaさんはこのように話していたそうだ。
「挑戦」と「我慢」という言葉が共存していることが、海外での活動・制作においてバンドがまさに”はみ出して、馴染んで”きたことを物語っていると思う。
自分が「Stand Out Fit In」のミュージックビデオに投影するのは、日本から世界へ飛び出し、そこでの環境に馴染もうとしているロックバンドの姿。
日本をはみ出して、アメリカのやり方に馴染んで、最終的に世界に通用するロックバンドとして再びはみ出すタイミングを、ONE OK ROCKは見据えて世界の現場で戦い続けている。
“僕らはロックを好きだからこそ、ロックを生き返らせたいとは思っていて。で、今はここにロックを生き返らせるための方法論があるんじゃないかと思うんですよ”
– MUSICA 2019年3月号 ONE OK ROCKインタビュー
これを有言実行出来る日本のロックバンドはワンオクしかいない。
「Eye of the Storm」を作り上げたのは、日本を席巻したONE OK ROCKの音楽を、世界規模で鳴らすため。
みんなが好きなワンオクロックも、きっと未来に連れていってくれるはず。
それに今作の楽曲も、ライブではカッコ良いバンドアレンジに仕上げてくれるだろう。
「じゃないとカラオケになっちゃう」って本人も言っていたから(笑)