Sugar(@Sugarrrrrrrock)です。
04 Limited Sazabysの3枚目のフルアルバム「SOIL」の楽曲感想を書きにやって来ました。
前回はこのアルバムが完成するまでのストーリーを記事にまとめたので、合わせて読んでいただけると嬉しいです。
この「SOIL」なんですが、1曲1曲でもいろんなシチュエーションで聴きたくなるし、続けて2周目に入っても飽きが来ない。
バンドのルーツに忠実な曲が多いのに、色んなタイプの曲が詰め込まれていて、1枚通してどんなアルバムかって言われるとまだまだ難しくて聴きごたえがある作品だと思います。
バンドが成長したことで、周りのバンドとか大人の目は気にしなくてよくなった代わりに、
ファンから見た「こんなフォーリミが見たい!」は全方位に応えてるアルバムです。
今回は発売して数日が経過したので、新曲も含めて全曲僕なりに感じたことを書いてみました。
すでに何回か曲を聴いた方に新たな気づきを与えられたら嬉しいし、まだあまり聴いてない方もこの楽曲感想で新しい曲に興味を持っていただけたら幸いです。
目次
04 Limited Sazabys「SOIL」全曲レビュー
M1.「message」
https://youtu.be/vyoeWTBYJ2o
英語詞でメロディックでショートチューン。
このような音楽があって04 Limited Sazabysというバンドが始まったのは当然のように知ってる人も多いと思うけど、今これをやるのかって。
バンドの1番根っこの音楽なのに、初めて聴いた時は驚いたしとてもワクワクしました。
「10年前の自分に向けて留守電を入れるなら」
「10年来のファンはどんな曲が喜んでくれるか」
というのがテーマで、だからこそド直球のメロディックパンク。
I’m already tired sick and tired of singing about the negatives.I’m giving away the different things now.
訳)僕もすっかり絶望は歌い飽きて 今は別のものを届けて回ってるよ
訳)僕には君を強くする責任があるんだ
そしてこの詞を歌えるのが10年経った強くてカッコ良いバンドの現在地ですよね。
でもこれはあくまで自分の中の絶望は歌い飽きたって話で、リアルタイムで絶望真っ只中の人にはしっかり寄り添っていて、
1曲の中に不安や葛藤も未来の希望も同一線上で放つのがフォーリミのヒーローたる所以です。
あとこの曲が良いのは、10年前のバンドに対して歌ってるコンセプトなのに「I’ll be back」って未来形で締めてるんですよ。
昔の自分は今の自分の中にずっと生き続けると思うし、いつからでも過去の意味合いは変えていけると思うから、昔の自分にも「また会いに行くよ」ってことなんだろうと。
今の自分は昔の自分にどんな声をかけたいと思うか、逆に理想の自分は今の自分にどうハッパをかけるか。
リスナー1人ひとりも各々自分自身にショートメッセージを送ってみると良いと思います。
あとは1曲目あるあるで、最後の「Squall」を聴いてもう1回この「message」に戻るのもエンドロールみたいな感じで良いと思います。
M2.「My HERO」
「message」からの繋ぎが最高。冒頭2曲4分弱で「俺たちはこれからもこういう音楽で勝負するんだ」って姿勢がガンガン伝わってきます。
「message」はやっぱりライブハウスで鳴ってるイメージが強いけど、「My HERO」のツービートはより開放感があってアリーナ規模が似合う。
シングルとしてリリースされた時の「My HERO」は、
リスナーが「俺たちの04 Limited Sazabysだ!」って共有するための曲であり、
バンドが当初憧れていたヒーローが超えたい存在になったことを歌った曲であり、
アリーナワンマンで話していた「ヒーローになってからのストーリー」に導いていく曲というイメージでした。
1曲単位で聴くと「俺たちヒーローになったぞ」って曲なんだけど、「SOIL」に収録されることで、個人的には「message」とは逆に、
「10年前のバンドがもし10年後の理想を歌うとしたら」
というテーマで歌っているように聴こえました。
M3.「Brain sugar」
いわゆるポップパンクな曲。バンドがこれまで研いできた武器が炸裂してます。
ギターがなんか異国感あってハモりが小気味良い。サビでシンガロングしてもめっちゃ気持ち良さそう。
詞も曲名の通り甘いテイストで、これもバンドらしさに溢れてます。
2番の「無意識 足し引き 駆け引き」という歌詞がインディーズ時代の「No way」という曲と同じでオールドファンは心がくすぐられたかもしれません。
可愛い系の曲はちょっとなぁ…と思う男子も満足するんじゃないかと、詞は甘いけど、鳴ってる音はちゃんとパワフルな曲です。
M4.「Utopia」
今作の推し曲です。ただただ速くてカッコ良い。
このタイトルでここまで重くて鋭いのは想像出来なかったです。
Aメロとサビの入りのドラムカウント、あの一瞬の間からの爆速ビートが最高。
ユートピアそのものではなく、そこに辿り着くまでの険しい道のりで、赤みがかった広大な荒野をひた走ってる曲。
「許されない 重い 鎧」の正体はいつも「間違う未来」へと連れていく自分の呪い。
向かい風の向こうに差し込む微かな光に進むには、理論武装なんてせずに身軽なありのままの姿で飛び込むんだと。
ロックバンドの使命感でもあり、1人の人間としてどうあるべきかも訴えかけてくれるからついて行きたくなる。
鎧を脱ぎ捨てて身軽になって自分の中の敵をバッタバッタ切り倒していく、ヒーロー感に溢れる曲です。
こういう曲がアニメの主題歌になるっていうのもまた良いですね。
最後のサビの
君という意志が 確かに聴こえた
が次の「Milestone」へ繋がる布石にも感じました。
M5.「Milestone」
GENさん曰く「SOIL」の心臓。シングル2曲と並んで1番ストレートな曲だと思います。
メンバーが公言している通り、タイトルも歌の内容も「monolith」と同一線上にある曲。
歌い出しが同じ「いつか」で、「醒めない夢」を歌ってますよね。
実際希望を歌ってるのは最初と最後だけなのがフォーリミらしくて、
過去に掲げた夢から遠ざかるほどに重責がのしかかるような歌詞世界。
終盤の「見えたのは 叶えられないイメージ」という歌詞も、
「monolith」の「メモに残された 掴めそうで掴めない 有言実行」とリンクしているように感じます。
「あの頃の夢を思い出せ」だけじゃなくて「信じて続けてきたら夢叶ってるぞ」って過去の自分に教えて救ってやろうという、
「monolith」の時から幾分大きくなった今のバンドの状況だからこそ出来た曲。
この先もきっとバンドの規模感だったりで迷うこともあると思うから、その時に道標になる曲としてこれから輝きを放って欲しいですね。
M6.「Password」
「Milestone」まで、ものすごい勢いで突っ走ってきたからここでペース的には落ち着くけど、「Milestone」と一緒にアルバムの真ん中でドスッと支えている曲。
「SOIL」がどんなプロセスで出来たのかが1番伝わってくるのがこの「Password」だと思います。
2番の
「喜びも苦しい 悲しみも楽しい」
「年々覚えた技 時間で研いでる」
が個人的にこのアルバムの中でトップクラスの歌詞で、
状況が良くなることで丸くなったりたるんだりするのはカッコ悪い、今も渇いて飢えていたいというアーティスト精神と、これまで身につけてきた武器を磨き上げて戦う姿勢を感じました。
こういう作品にしようっていうまさに「閃きの鍵」を手に入れるまでのことが歌われている名曲です。
Aメロの古き良きハードロック感も良いですね。
M7.「Alien」
ルーツというか、持ってる武器を磨き上げた曲が揃ってる「SOIL」の中で、これは今までにない、新しいなって感じた曲。
バンドの身軽さもありつつ、ラウドでミクスチャーなテイストでカッコ良いですね。
「過敏すぎた 精神構造」とか「ばらまかれた 無関心同士」とか、何かを揶揄したようなワードの散りばめられていて、異世界のエイリアンみたいに奥が深くて読み解きがいがある。
個人的には大好きなMAN WITH A MISSIONの「database」っていう曲に似たものを感じてアガりました。
M8.「Kitchen」
「Brain sugar」と同じ可愛いテイストの曲でこれもまたフォーリミらしい曲だと思います。
「にゃんゴロ にゃんゴロ」って歌が始まった時は大丈夫かよって思ったけど、思ったより可愛くなかった。良い意味で。
この曲のBメロは走って跳ねてて歌もリズムに乗っていてめっちゃカッコ良いですね。
サビの最後の歌詞
フィクションで 泳ぎたくなっちゃうや
は、フォーリミよく知ってる人はニヤっとしたんじゃないかなと。
この曲は、深夜で1人でヒマしてる時に現れる自分の中の不安とか憂鬱とかそういう感情と戦う曲だと思います。
「そろそろ出てくるアイツ」は自分が作ったネガティブモンスター。
それを「かかる重力の解消法」=「音楽」でぶっ倒すっていう曲。
この音楽が根暗な人を救う逃げ場に、自分の中の不安と向き合うきっかけになったら良いなと思います。
M9.「Galapagos」
タイトルからして世の中に対する違和感だったりヘイトをぶちまけた曲になるんじゃないかと、発売前に1番気になっていました。
蓋を開けたらそのようなメッセージも感じさせつつ、メチャクチャに遊びまくってるバンド史上1番カオスな曲でした。
ガラパゴスって曲名からもわかるように、この国のことを言ってる歌ですよね。
誰かが褒めたら一緒に褒めて、叩いてたら一緒に叩く。
幸せを他人に委ねたり流されたり、ジャンルにはまったりカテゴライズされることで居場所を見つけて安心するけど、結果身動きとれなくなってるみたいな。そんなことを感じました。
「列島の異常気象」とか「安全圏で情報操作」ってワードでそんな日本をグサッと刺してる。
自分の根源の問いに迫らず誰かの意見に合わせるなと。
特定の場所にはまらないことで身軽さと自由度を手に入れたフォーリミだからこそ説得力もありますね。
そういうメッセージ性をエンターテイメントに昇華させた曲です。
M10.「memory lane」
バンド初期のルーツを思わせるパワーポップ。
「Brain sugar」と同じでサビの出だしで歌いたくなるし、少し洋楽っぽい。
曲名を雑に訳すと「記憶の引き出し」みたいな意味で、
人によっては失恋とか苦い思い出を思い起こさせるような曲なのかなと思います。
そういう感情にいつまでも囚われてたらダメだけど、人生の原風景としてちゃんとしまっておいて、必要な時にハッパをかけてくれるような記憶を残しておきたいですよね。
「生き急いで 思い込んで てんで駄目だったな」
「君のために 僕以外に チャンス あげちゃったよ」
僕は2番のこの歌詞が好きで、バンドが大人になれずにいた時期の駄目な部分と、大人になってからの駄目な部分とを両方表現してる感じがしました。
M11.「Shine」
CMソングとしていち早く登場していた曲。鍵盤も入ってポップスって感じです。
こういう曲が増えたらちょっと違うかもって思ったけど、結果的に攻め攻めのアルバムに仕上がったので良いアクセントになってますよね。
日々の生活に入り込むような、まったりしたサウンド。
朝起きた時に登る太陽を見ながらとか、夕方仕事で一息つくときに夕空見ながらって感じで早速聴いてます。
ただサウンドはポップだけどボーカルのエモさはかなり際立ってます。
最初と最後の英語詞も良くて、心を照らして涙を乾かしてくれと歌った後に泣きのスコールが降り注ぐわけですね。
M12.「Squall」
1年前にリリースされたシングル曲。「SOIL」のプロローグとして今のバンドを引っ張ってきた曲だと思います。
この曲と一緒に1年過ごしてきた実感があるので、この曲がラストで務まるようなアルバムになって本当に良かったです。
「自分自身に生まれ変われ」というメッセージが「SOIL」全体に波及したことで、本心を引っ張り出した曲が出来ていったと思うし、この曲がライブで育ったからこそ完成した土壌だと思う。
まさに地を固めた五月雨、言うことないです。
これからも本来の自分からズレてきた時にズレをリセットしてくれるような、いろんな感情をブレンドして循環させるような曲として、多くの他人の内側に降り注いで欲しいです。
初回盤に収録されている「SOIL」のレコーディングドキュメンタリー映像が、楽曲の背景を知ることができてオススメです。