ライブレポート

Base Ball Bear “17才から17年やってますツアー”をZepp Divercityで観た

3/15にBase Ball Bearの”LIVE IN LIVE 17才から17年やってますツアー”を観にZepp Divercityへ行ってきました。

 

年明けにリリースされた最新EP「ポラリス」と、ツアータイトルとも縁が深い2ndアルバム「十七歳」の曲を中心に演奏すると予告した上で行われている全国ツアーということで、この2作品の曲については言及していますが、ツアー開催中につきセットリストのネタバレはしていないので是非最後まで読んでいって下さい。

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ツアータイトルからも分かるように、17才にバンドを組んだバンドの17周年アニバーサリー的側面もある今回のツアー。

 

今年の夏にナンバーガールが17年ぶりに再結成するというニュースで盛り上がっている。

17年前にZepp Tokyoで解散前の東京でのラストライブを観に行って「俺たちもこのステージに立つ」と決意を叫んだバンドがBase Ball Bearだ。

 

開場中のSEでは、くるり「ばらの花」やスーパーカー「STROBOLIGHTS」など、17年前の2001〜2002年頃にリリースされた曲が流れていた。

ナンバガも含め、当時のロックバンドシーンをリアルタイムで体験してみたかったなあと想いを馳せているうちにライブはスタートした。

 

 

Base Ball Bearは3人の現体制になってから3年ほどになるが、年明けにリリースした「ポラリス」は4ピースから3ピースのバンドサウンドに生まれ変わった最初の作品ともいえる。

 

3人バージョンに刷新された演奏の骨太さが音源よりも何倍もダイナミックに伝わってくる。ライブハウスでの音作り、立ち振る舞いも含めた表現力が格段にレベルアップしていることに終始「すげぇ」と呟きながらライブを堪能していた。

昨年は個々の音楽活動にも勢力的に取り組み、その独立心が結果的にバンドの結束力を深めている。3ピースになったことでメンバーそれぞれが積極的にバンドを還元しようとしている姿勢がステージでも全面に溢れていた。

 

最新作「ポラリス」と、ツアータイトルにちなんでセカンドアルバム「十七歳」の楽曲を中心にライブは進んでいく。

「ポラリス」「十七歳」以外からもリズム隊の太さが活きる曲とスクールデイズの世界観に近い曲が並び、両作との親和性が高い納得感と充実感のある選曲だった。

 

「”十七歳”はスクール感を意識して作ったけど、決して17歳当時の曲だけではなくて。当時は浮いてた曲もあったけど、良い感じで年を取ってきたのでオジサンっぽい感じで演奏します」

と小出さんが話して披露したのは「十七歳」から「FUTASU NO SEKAI」

当時からしたら確かにティーン離れしたガレージ感の強いこの曲。キャリアを積んだことで当時にはまず出せなかったであろう大人のグルーヴと、3ピースのアンサンブルをもってようやく完成したと言える出来栄えだった。

 

最新作からの「PARK」では、ギター・ドラム・ベースのトライアングルだけでなく、ドラム・ベース・ラップでも盤石な三角形を描き出す。

小出さんのラップもバンドマンのそれとは思えないぐらいにキレているが、今のベボベのライブを観て1番驚くのは関根さんのベースの弾きっぷりだ。3ピースになってからは多くの曲でベースが主旋律となってゴリゴリに鳴り響いている。青春バンドの紅一点的なキャラクターはそこにはもう居なかった。

 

ベースの他にも1本でギター・ベース・シンセの音を表現出来るチャップマンスティックという楽器を使いこなし、原曲ではギターソロだったパートを関根さんが引き倒すという謎現象も起こっている。

ミニマムな構成、限られた楽器と音数の中で最大限のエネルギーを発揮する。そこに生まれる熱量こそまさに”バンド感”なのだと感じたし、自分の好きな音楽なんだということを改めて認識できた。

 

 

「2019年は転機の年になると思っていて、この1年を新たら始点(支点)に、三本柱として頑張っていきたいと思います。そんな気持ちを込めてこの曲を」

と語って演奏したのがEPの表題曲「ポラリス」

 

ポラリス=北極星を囲む3点の星をメンバーになぞらえた曲は、まさにこれからのBase Ball Bearの決意が歌われている。


この曲でついにボーカルデビューした堀之内さんの歌唱パートでは、小出さんと関根さんもドラムセットの台に上がってドラムボーカルに向かって息を合わせるように演奏する。

続く関根さんの歌唱パートでは、今度は小出さんがドラムセットに腰掛けて遠目にギターを弾く。

 

アンコールで「ギター俺!」と小出さんがギターソロをかき鳴らせば、関根さんが小出さんの近くに駆け寄り、フロアと同じように右腕を振って応援する仕草を見せた。

この距離感こそ普段からのベボベの3人らしいなと思ったし、バンドとして17歳を迎えてまさに2度目の青春真っ盛りなんだなと。

 

 

ただ、「十七歳」というアルバムは決して明るく楽しいアルバムというわけではない。小出さんにとっての10代はむしろ日陰にいた時代でもあったからだ。

「ポラリス」の2曲目「Flame」で歌っている「自分でいくつも吹き消した炎」「くすぐったいドラマ」「あたたかいトラウマ」 そんな過去の記憶なのだと思う。

 

「十七歳」にはリリース当時23才だった小出さんの”17才の自分自身”に向けてのメッセージも詰め込まれている。

タイトル曲「17才」の「ひとりじゃない感動 覚えたことはないか?」という詞がこの日のライブで改めて胸に響いたのは、今の自分にとってもスクール時代の自身に贈りたい言葉だから。かもしれない。

 

 

17年のキャリアを持つロックバンドだから、この日のライブには自分より年上のファンさんも沢山いたし、自分のように「short hair」を聴いて高校時代を過ごした同世代もいたし、何より現在進行形で青春時代を過ごしているであろう若いお客さんも沢山集まっていた。

そんなタイミングで「十七歳」というアルバムをリバイバルさせたことに、とても大きな意味があるように思う。2007年のセカンドアルバムだけど、3人の現体制になってからのセカンドアルバムとも言えるぐらいに新しく力強く生まれ変わっていた。

そしてそれは「ポラリス」で”4引く1の3人組”から”純然たるスリーピース”にモデルチェンジしたバンドサウンドに挑戦したからこそ成し得たのだ。

 

 

19才の時にベボベのワンマンライブを観て以来、彼らとは距離を置いた期間もあった。メンバーが脱退して4人から3人になった時はまさにその期間で、もちろん残念だと思ったけど深く感情移入することも出来ない複雑な心境だった。その後フェスで何度かライブを観てバンドのカッコ良さに改めて気づき、ワンマンでようやくヨリを戻せたような気分でいる。

 

音楽に限らず年を重ねていけば好き嫌いも変わってくるけど、変化を受け入れて今が1番カッコ良いと思える経験があれば、1度好きになったアーティストとはこれからも長い付き合いが出来るんじゃないか。そんなことを思った自身4年半ぶりのBase Ball Bearのワンマンライブだった。