ライブレポート

ストレイテナー「21st ANNIVERSARY ROCK BAND」を幕張メッセで観た

Sugar(@Sugarrrrrrrock)です。

 

1月19日、ストレイテナーのワンマンライブを幕張メッセイベントホールで観てきました。

 

2017年の秋から行われていたバンドの結成20周年アニバーサリーを締めくくる、集大成的なライブ。

 

その模様と、バンドに対する想いを以下に詰め込みました。少し長いですが読んで頂けたら嬉しいです。

ライブレポート

この日のMCでも口にしていたのだが、ストレイテナーのフロントマン、ホリエアツシさんは自分のことをよく「捻くれ者」だと言う。

 

自分は20代のストレイテナーを経験していないのだけど、過去の曲や映像からはひたすらに尖っていたイメージがある。彼が言う捻くれ度合いが、周りを突き刺すように、孤高の存在として作用していたのだと思う。

 

でも10年、20年とバンドを続けていくうちに、その捻くれ度合いゆえに色んな人の価値観を許容するように変化していったのではないだろうか。

「求められているものとは違うかもしれないけど、自分たちはこれがやりたい」という思いからは素直さが滲み出るようになり、そこにはちゃんと反骨心も共存している。

 

尖りながらも丸みを帯びたロックバンド。その懐の深さに自分は特に魅力を感じている。

 

 

前置きはこれぐらいにして、ライブの模様を。

 

ライブのオープニングは、SEと共にモニターに映し出されたメンバー1人ひとりの紹介映像。

 

一際目立っていたのはドラムセットを放り投げたり、曲の間奏でフロアに飛び込んで10分近く戻って来なかった時のシンペイさん。

冒頭に書いた尖り具合が如実に現れていた映像にオーディエンスは笑みを浮かべていた。

 

そのシンペイさんが

「幕張メッセのバーサーカーに捧ぐ!」

と高らかに叫んだ「BERSERKER TUNE」でアニバーサリーライブの口火を切った。

 

バンド屈指のアグレッシブなライブチューンからのスタートに、早速期待を良い意味で裏切られた。

 

「踊ろう いつもの僕らのように」

とムーディーな歌声を響かせて披露された「Alternative Dancer」ではその言葉通りに思い思いにフロアが揺れる。

 

昔はきっとお客さんも若かっただろうし、当時のバンドと同じくガツガツ盛り上がっていたと思う。

バンドの変化と同じように、オーディエンス同士も1人ひとりの自由度に身を任せるような楽しみ方にスタイルを柔軟にシフトしていったのだろう。

 

最初のMCでホリエさんは

「ずっと今日のことを考えてきました。今日が最後でも良いって気持ちでやりたいと思います!」

「でも、明日からまたやりたいって思える1日にしたいと思います!」

と話した。

 

この矛盾する2つの想いがぶつかるところに、ロックバンドの熱量は生まれるし、この2つの想いが回っていくことでバンドは転がり続けていくのだ感じた。

 

 

明日から走り出していく日々にこの日の瞬間を刻みつけるように「DAY TO DAY」が鳴らされる。

続く「タイムリープ」も、過去に取り残されたものを呼び起こすような機能を果たす曲。

 

“未来に残す”なんていう表現をたまに見かけるけど、まさにそんな価値観がこのバンドにもあるのだと思った。

 

 

続けて披露されたのは、00年代を代表するライブバンドとして躍動していた頃にシングルリリースされた「Man-like Creatures」「Lightning」

ライブバンドのイメージとは離れた音楽性で今振り返ってもかなりの意欲作だと思うが、それを受け入れて人気曲にしていった10年来のファンの懐の深さ、センスの良さにも感謝したい。

 

ピアノでワンコーラス弾き語った後に激しくぶつかるバンドサウンドに切り替わる「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」からは再びアグレッシブモードへ。

 

静と動、ノスタルジーとエモーショナルを行き来した「冬の太陽」ではステージの背後にメンバーの影を映す演出も演奏を引き立たせた。

 

8曲を続けて演奏したブロックのラストは「TRAIN」

前回の幕張メッセの時から鳴り続けている屈指のライブチューン。最後のサビを歌い終えるとホリエさんが突き抜ける声で叫んだ。

 

 

このブロックを終えると「VANISH」をSEにメンバーがステージを後にし、ステージ中央に用意されていたサブステージに移動。

 

バンドセットが組み立てられ、幕張メッセのど真ん中にメンバーが立つと、最後のサビの前から生演奏でフロアを大きく揺らした。

アリーナの後方ブロックからは、背伸びをしてステージの全貌が見えるかどうかだったメンバーが突然目の前にやって来た。

 

「なんか邪魔だったし、バレバレだったでしょ?」と、以前ここにラブライブとBLACKPINKを観に来たというシンペイさんが自虐気味に話す。

 

「みんなと同じ視点に立ちたくて、念願叶ってます!ライブは今この瞬間だけなので、その眼に焼き付けてください!」

前回の幕張メッセや過去2度の日本武道館では行わなかった、キャリア初のサブステージでの演奏。

大きい会場あるあるとかではなくて、純粋にやってみたかったんだろうなという想いがステージ上のメンバーの笑顔から見て取れる。

 

「こういうとこでやるのみんな大体アコースティックだけど、俺たち捻くれてるから、ここでダンスチューンをやりたいと思います!」

というホリエさんの言葉に大歓声が上がった。

こういうことをやりたいという純粋な憧れと、それでも他のアーティストとは違うんだというテナーらしさが共存しているのだ。

 

「でも、慣れないことするから音合わせるのが大変」

とホリエさんが不安をこぼすと、

「ホリエくんなら出来る。ホリエくん天才だから」

とすかさずひなっちさんが笑い混じりのフォローを入れた。

 

宣言通りのライブチューン「瞬きをしない猫」そして「KILLER TUNE」を四方を囲むステージに立つメンバーの真っ正面で観るのは、普通のライブハウスやフェスのライブの感覚とは全然違う。テレビ番組の生演奏を目の前で観ているような臨場感だった。

 

上空ではミラーボールが回り、フロアを照らしていたメインステージからのレーザー光線がサブステージを鋭く輝かせているのも圧巻。

 

このステージで最後に演奏された「DISCOGRAPHY」の最後にはステージを囲むように銀テープが舞った。

早くもクライマックスかのような華やかさと、その華やかさの真ん中でバンドを20年続けてきた40過ぎの人達が演奏している姿はとても感動的だったし、同時に何だか笑えてしまった

 

念願のステージでの演奏を終え、再びメインステージに戻ると、前置きもなくこの日のスペシャルゲストの秦基博さんが4人と一緒にしれっと登場。

 

「すっかり冬の名曲入りしています。でもTシャツ姿で、スタジオ帰りのビールが美味かった一昨年の夏に作りました(笑)ついに5人で初披露です!」

と、一昨年にリリースされたコラボシングル「灯り」を演奏。

この季節に聴くのはもちろん、この1年間夏フェスのステージなどでも大切に演奏してきた名バラード。秦くんの甘い歌声が加わることでより一層暖かい、多幸感溢れる空間を作り出した。

 

「”灯り”だけじゃ物足りないでしょ?」

と続けたのは、同シングルの2曲目に収録されたストレイテナーバージョンの疾走「鱗(うろこ)」

 

原曲とは比べ物にならないBPMの中でアコギを搔き鳴らし、原曲に違わぬ歌声で魅了した秦くんのパフォーマンスには脱帽。アニバーサリーに相応しい豪華コラボだった。

 

4人のステージに戻ると、

「秦くんが好きだと言ってくれた曲」

という曲フリで「Boy Friend」を披露。

 

ロックバンドの源流にある感情を、ミドルテンポのポップなメロディーに乗せて鳴らした曲。うだつの上がらないバンド初期の情景が蘇る歌詞。

「灯り」もそうだけど、20年バンドを続けて、色んな音楽、色んな人を許容出来るようになったからこそ生まれた曲だと思う。今のストレイテナーは本当に温かい。

 

直近の楽曲投票で3位にランクインし、この5年間でバンドの新たな名曲として定着した「彩雲」を経て、同ランキングで映えある1位に輝いた「REMINDER」へ。

 

敢えて喉を潰してレコーディングしたという豪快なエピソードもあるように、当時のバンドの荒々しさと衝動を込めた1曲を、今は1つひとつ丁寧に音と言葉を紡いでいく。

その重みと深みに並並ならぬエモーショナルを感じた。

「去年さんざん過去を振り返ったので、未来の話をしようと思ったんだけど、未来のことなんて全然わかんない。自分たちを裏切らないカッコ良い音楽を作って、楽しいライブをするだけです!」

 

「1つだけ言えること、今までもこれからもストレイテナーはずっとこの4人でやりたいと思います!」

 

ロックバンドを何年か追い続けて、いつ止まって終わるか分からないということを痛感させられる状況も何度か目の当たりにしてきた。歴の長い方なら尚更だと思う。

だからこそ、こうしてバンドを続ける決意表明をしてくれることがファンにとっては本当励みになる。

 

先のことはわからないけど止まるつもりはない。そうやって未来を手繰り寄せてきたバンドだからこそ歌える「The Future Is Now」からライブはクライマックスへ。

 

捻くれていたり、ノーを突きつけたり、それも全て彼らの率直さでもあり、それらを大事にしようというメッセージが込められている「原色」の「孤独はいつも味方だった」というフレーズは、孤高のロックバンドのファンにとっての味方だった。

「今日7,000人が来ています!無理に強制はしないけど、みんなの声を聴かせてくれ!!」

お客さんの自由度を尊重するホリエさんの優しさも見えた曲フリから巻き起こった「Melodic Storm」では四方からステージの音を搔き消す程の歌声が響いた。

 

そして「その目に焼き付けてくれ!」とクライマックスに達するノスタルジーも感じさせながら「シーグラス」を演奏して本編は締めくくられた。

 

 

アンコールではグッズのTシャツに着替えてメンバー再登場。

 

「ライブ観て”泣きそうでした”って言ってくれるファンさんを”泣きました”って言わせたい」

というシンペイさんとひなっちさんの抱負に始まり、そこから泣ける映画の話とか、周年記念の法被の話とかかれこれ20分ぐらい飲み会トークが繰り広げられた。

 

痺れを切らせたOJさんの

「もうやろうよ!!」

の一言で会場全体が我に返り、「From Noon Till Dawn」で演奏を再開。

 

「今だったら言える みんな愛してるぜ!!」

とホリエさんが歌詞を変えて叫び、フロアからは歓声が上がった。

 

続く「羊の群れは丘を登る」は自分が高校生の時にストレイテナーを知った時にYouTubeで何度も聴いた、このバンドのイメージを植えつけてくれた曲。

 

自分のロックバンド史の中では付き合いの長いバンドではあるが、それでもテナーの20年の歴史の中の3分の1ぐらいしか関われていない。

当人は「あっという間だった」と言ったりもするけど、人1人が成人するまで1つのバンドを続けるって、20年ちょっとしか生きていない自分からしたら想像がつかない程スゴイことだ。

 

 

鳴り止まない拍手にダブルアンコールで再々登場。

 

アニバーサリーを締め括るべく、そして次の歩みを進めるべくホリエさんがこう話した。

「いつかストレイテナーの音楽が必要なくなる時が来るかもしれないけど、それぞれの人生だからそれはしょうがない。俺だって昔好きだった音楽聴かなくなったから」

「でも、また皆さんの人生のどこかで俺たちの音楽が鳴り響けば良いなと思ってるので、俺たちは立ち止まらずに鳴らし続けます!」

いつかは離れてしまうかもしれない、そんな気持ちをも肯定してくれた言葉に感動した。

 

今好きなものを10年後も20年後も好きでい続けられるかどうか、正直想像がつかない。

一方でこれから自分の人生からフェードアウトしていくものもあるとなると、今は”そんなのは嫌だ”と思う。

 

たとえこの先どこかで空白が出来たとしても、また然るべきタイミングで交わったら良いなと思う。その時までバンドを続けてくれていたら、きっと今以上に感動させられる気がする。

 

「この日のために新曲作ってきました!」

と、この日のグッズにも曲タイトルがプリントされていた新曲「SPIRAL」を演奏。

直前のMCに込めた想い、そして21年目以降もバンドが歩み続ける決意が詰まっていた。

 

モニターには歌詞と、昨年末の全国ツアーのロードムービーが流れる。

地方のライブハウスのフロアの映像、この日も色んな場所からお祝いに駆けつけたと思う。

曲の最後、映像のラストでスマホをインカメラにして写真を撮ろうとしている40歳を過ぎた4人の姿には込み上げるものがあった。

 

「まだまだ続く旅の何処かでまた会いましょう。ストレイテナーでした!」

長きに渡ったライブを、そしてバンドのアニバーサリーを締め括る最後の曲はやはり「ROCKSTEADY」

 

1コーラス歌った後のホリエさんの叫びに、この日1番の感情が爆発した。

 

 

トリビュート、オリジナル、ベストとアルバムをリリースし、その間3度の全国ツアーを経てこの日まで20周年アニバーサリーを走り抜いた。

 

ほんの少し一休みして余韻を感じたら、また新たな旅立ちの時がすぐに訪れる。ストレイテナーはまだまだ止まらない。足が言うことを聞いてくれるうちは。

率直な人生に贈るロックバンド

ぴったり3時間で28曲、そのうちちょうど半分が前回の15周年のアニバサリーライブ以降にリリースされた曲。

懐かしい曲満載イベントにせず、今のストレイテナーの音楽で20周年の集大成を最大限に鳴らし切った。

 

 

自分はロックバンドの音楽、ライブ、人間性、それらが線で繋がるストーリーを、”非日常”とか”エンターテイメント”という側面だけで体感するのは勿体ないことだと思っている。

楽しければそれで良かった時期を経て、今はロックバンドに触れると湧き上がって来るのは「こういう大人になりたい」というリスペクト。

 

ストレイテナーもバンドを20年続けていく中で、自分たちにしか鳴らせないものへの拘りも強くなったと思うし、同時に周りの音楽やスタイルもどんどん受け入れられるようになって、良い意味で優しく丸くなっていったように感じる。自分もそういう歳の取り方をしていきたいと純粋に思う。

 

 

ストレイテナーというバンド名には”真っ直ぐにさせる人”という意味がある。

更にバンド名を中国語にすると”率直人生楽団”

これが正しい!と決めつけるだけでなく、それぞれの素直さを肯定してくれる存在。

この日のライブでもストレイテナーはカッコ良い音楽だけでなく、人としての懐の深さを見せてくれた。

 

 

まぁ、会場にガーゴイルの銅像を展示しておいて、デビューシングル「TRAVELING GARGOYLE」を演奏しない”捻くれ”っぷりは健在だったけど。それも彼ららしさとして笑い飛ばせた。

 

真っ直ぐな人もどこか曲がってる人も、その人の1番素の部分を大事にしたい。

そんな人生に贈る頼もしいロックバンド。これからも宜しくお願いします。

 

2019.1.19 幕張メッセイベントホール

ストレイテナー「21st ANNIVERSARY ROCK BAND」

 

セットリスト

M1. BERSERKER TUNE

M2. The World Record

M3. Alternative Dancer

M4. DAY TO DAY

M5. タイムリープ

M6. Man-like Creatures

M7. Lightning

M8. Braver

M9. SAD AND BEAUTIFUL WORLD

M10. 冬の太陽

M11. TRAIN

M12. VANISH

M13. 瞬きをしない猫

M14. KILLER TUNE

M15. DISCOGRAPHY

M16. 灯り with 秦基博

M17. 鱗(うろこ) with 秦基博

M18. Boy Friend

M19. 彩雲

M20. REMINDER

M21. The Future Is Now

M22. 原色

M23. Melodic Storm

M24. シーグラス

〜アンコール〜

EN1. From Noon Till Dawn

EN2. 羊の群れは丘を登る

〜ダブルアンコール〜

EEN1. SPIRAL

EEN2. ROCKSTEADY