ライブレポート

ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour「ホームタウン」をリキッドルームで観た

3/18にASIAN KUNG-FU GENERATIONのツアーを観に恵比寿リキッドルームへ行ってきました。

 

昨年末にリリースしたアルバム「ホームタウン」を提げた全国ツアーは前半にライブハウス、後半にホールを回る。そしてライブハウス編には各公演にフロントアクトが出演し、今回のリキッドルーム公演にはHomecomingsが招かれた。

 

一部演奏曲についても触れましたが、ツアー中につきセットリストのネタバレはしていないので是非最後まで読んでいって下さい。

ライブレポート

まず登場したのはフロントアクトのHomecomings。

「ホームタウン」の楽曲のゲストコーラスにも参加した畳野彩加さんの歌声は、自分の親世代に聴かせたらユーミンを思い起こさせるかもしれない。生活のサウンドトラックとしてずっと聴いていられるような音楽だ。

 

序盤は日本語詞に挑戦した最新アルバムではなく、「PLAY YARD SHYMPHONY」「HURTS」といった英語詞でライブ映えするような楽曲を続けて披露。

ライブ映えするとは言っても火花を散らすような雰囲気はないし、フロアを煽るようなことも一切ない。丁寧にバンドアンサンブルを紡いでいく凛とした姿が印象的だった。

 

日本語詞の曲は来月公開の映画の主題歌に決まった新曲「Cakes」と最後に演奏した「Blue Hour」

夜のライブハウスに集まる人に対して、寂しさを埋めずに抱えていることの美しさを歌っているような2曲だった。

 

 

続いて、Homecomings畳野さんがゲストで参加した音源完全再現の「UCLA」で幕を開けたASIAN KUNG-FU GENERATIONのライブ。

 

サウンド面を刷新させた「ホームタウン」の音源で衝撃を受けた低音はあくまでレコーディングにおいての話で、それが果たしてライブハウスで再現出来ているか、というのは別問題だとは思う。

とはいえ、それぞれの楽器の一音一打を力強く鳴らせる、そして聴き取ることが出来る楽曲が並んだセットリストは今のアジカンのモードを強く感じさせるものだった。

 

「リラックスして、自由に、ふにゃふにゃになって帰ってください」

と話したゴッチさんは、最近はライブ中誰よりも楽しんでるんじゃないかってぐらいに身体をくねらせ、右手が空いたら謎の振り付けで踊り、唐突にはにかむ。

 

今作はやはりサウンド面で産みの苦しみを覚えたとは思うけど、ライブを含めてそれ以外の部分ではバンドの雰囲気はとても良好(ゴッチ語で言うなら”ヘルシー”)に見える。

そんなステージ上の自由度が特に目立った「レインボーフラッグ」ではふにゃふにゃになったあまりに歌詞を飛ばしてしまうシーンも。まさに「苦笑いで ゲットダウン」だったとゴッチさんは自虐した。

アルバムの曲も含めて総じて演奏曲のテンポはややスロー寄りではあったが、棒立ちではなく各々のペースで身体を揺らしたり、歌ったり。

それこそが今のアジカンが作り出したい空間だと思うし、じんわりと熱を帯びていく心地良さはライブハウスの空気感そのものだった。ライブハウス編が終わりホールツアーに入ったらアルバムの曲もセットリストも色を変えてくるんじゃないかと思う。

 

「みんなエルレガーデンとアリスターのライブに行けなくて来たんでしょ?薄めで見たらあんまり変わらないから(笑)」

「俺も1回再結成して持てはやされたい(笑) 」

と、この日もいつもの調子で喋り出して笑いを誘っていたが、ゆるーいMCをしてると思っていたらそれが次の曲のメッセージに繋がっていたりする。

 

最終的には「辞めずに続けることも美しいと思うし、カムバックしてくれるのも嬉しいし”あの時見逃しちゃった”ってバンドと同じ時代にいれることがラッキーだと思う」

と語り、現在のこの時代に居られる喜びを「迷子犬と雨のビート」に乗せて歌った。

 

ライブ後半は自由に踊れる曲から徐々に力強く地を踏みしめるようなオーセンティックなロックサウンドを響かせる曲にシフト。

初めてアジカン主催のライブに行った身からしたら「この曲で?」と思うような曲でも盛大なシンガロングが起こっていた。どの時期の作品も知っていて好きでいてくれるファンがいるということが、バンドにとっては”いつまでも音楽を鳴らし続けよう”と思える大きな理由だろう。

 

 

「俺は基本的に死ななきゃいいと思ってるから、たまにちょっとした楽しみが出来てそのぐらいのお金があって音楽を続けられたら幸せだと思う。スゴイ高い家に住みたい訳でもないし、良い車に乗りたい訳でもないし、、、機材は欲しいけど(笑)」

とゴッチさんが自身の価値観を話したアンコールでは、別れの季節に映える「ソラニン」を演奏。

今の時期に聴くこの曲のパワーは凄まじく、引きずっている後悔をも浮き彫りにさせて感傷的にさせてしまう。そして、直前のMCで話していたような、だらっと続くゆるい幸せに憧れている自分を確認した。

 

人それぞれ違う形を持つ幸せの定義を1人ひとりが見出すことが、アルバムのタイトル曲「ホームタウン」で歌っている「雨上がりの空から子供たちが覗いて笑う」世界への第一歩なのかもしれない。

 

「自分のやってることがロックと言われようがロックじゃなかろうが、自分の魂が揺さぶられるものであれば何でも良い。この歳になってそれが1番大事だと思う」

「自由に自由にって言ってるけど、自分が作るものが誰かを縛るものにはなって欲しくない。譲り合ってやっていくしかないけど、みんなにとって心が解放される場所であって欲しい」

最後の曲を演奏し終えた時に目の前に居たのは、足跡だらけの地平に新しい地図を描くロックバンドの姿だった。

 

この日がツアー2本目。まだはじまったばかりだしホールツアーの公演数も多いから、今のアジカンの頼もしさを多くの人に知ってもらいたい。