フェス

“NF in MIDNIGHT SONIC”でサカナクションのライブを観た

SUMMER SONICが今年で開催20周年を迎えた。

「都市型」かつ「海外アーティスト」が出演する唯一無二の音楽フェスティバル。自分も実に5年ぶりに参加し、前半の2日間、国内外問わず多くのアーティストのライブを満喫した。

 

 

そして本編の後には、サマソニのリストバンドを付けている人が幕張メッセで楽しめるオールナイトイベント「MIDNIGHT SONIC」も開催。

その2日目が、サカナクションが主催するプロジェクト「NF」とコラボし「NF in MIDNIGHT SONIC」という形で行われた。

 

通常「NF」ではサカナクションのメンバーはDJとして参加するのみで、ライブアクトとしてバンドが出演することは無いのだが、今回は大型フェスの深夜イベントということもあったのかライブアクトでの出演が決まっていた。

 

 

純粋にサカナクションの音楽は真夜中にとても似合うし、自分も含めてお客さんの深夜のテンションというのもあると思う。加えて今回は普通のフェスよりも持ち時間が長い。

 

そんな環境で行われるサカナクションのライブ。深夜のテンションというやつに乗っかってヒットナンバーで踊らせまくるのか。

逆に深夜だからこそ染み入る、フェスではやらないような深くて暗い曲も演奏するのか。深い時間帯に期待も深まる一方だった。

ライブレポート

結果から言うと、上に挙げた期待の要素を全て含んだライブだった。

 

だし、その両面を表現したのが先日リリースされたアルバム「834.194」の世界観だった。つまり、今のバンドのモードを素直に80分に濃縮した素晴らしいライブだった。

 

最新アルバムのタイトルにもなっているインストナンバー「834.194」の一部分をSEに、そして上に挙げた動画の映像をバックにメンバーが静かに登場する。

 

ところが、その静寂を覆すかのように1曲目「アルクアラウンド」のイントロが鳴った瞬間、オーディエンスの大歓声が上がった。

 

普段だったらこの時間帯に1人で聴いていたいような曲だが、この10年間のロックフェスを盛り上げたヒットナンバー。

みんな笑顔で「嘆いて 嘆いて」と歌いながら一斉に飛び跳ねているのだ。

 

 

続けてこの時間にピッタリの「夜の踊り子」でフロアは更に熱を帯びていく。2回目の「どこへ行こう」から最後のサビまで周囲は終始大合唱。

 

 

これまでのロックフェスを彩ってきた昔の楽曲もライブの見せ方が全然違う。

従来通りレーザーを巧みに使った光の演出に加え、各曲のミュージックビデオをリアレンジしたような映像をモニターに映し、楽曲の世界観へと誘っていく。

 

 

そして最新アルバムから、バンドの”表の顔”の最新型とも言える「モス」

これまでも数万人規模で「アイデンティティがない」と歌い続けてきた所で今更感はあるかもしれないが、大勢の群衆が一同に「マイノリティー!!」と歌っている光景はやっぱり異質だし、同時にこれこそサカナクションのライブだなと思える光景でもあった。

マイナーな部分を抱えた1人ひとりが集まって一緒に歌うことに意味があるし、孤独を孤独のまま救ってくれる存在を我々は求めている。

 

 

ここからライブはアルバムの「DISC2」の世界観へ深く潜っていくことになる。つまり外向きで華やかな楽曲から、内向きでノスタルジーな楽曲が続いていく。

 

ところが、その1曲目の「さよならはエモーション」の最後のサビでも周囲では大合唱が響き渡った。

どう考えても盛り上がろうとして歌っているのではない。孤独な蛾が夜の光を求め集まるように、悲痛な気持ちを背負った祈りのように聴こえたのだ。

 

ステージには再びモノクロの映像が映し出される。オープニングで流れた映像の延長にあるような、東京のとある風景。そして、バンドの生まれ故郷である北海道の原風景も。

 

アルバムの1枚目に収録されたリミックスバージョンから原曲に繋げるように演奏されたのは「ユリイカ」だ。

 

演奏するメンバーを覆うように映像は流れ続ける。1人の女性が海辺で何かを叫んでいるシーンに、都会の映像が重なっていく。叫び声が掻き消されていくように。ここは東京(厳密には千葉)、深夜の幕張メッセのステージ。

 

思えばちょうど同じ時間、バンドが思いを馳せる先の大地でもオールナイトフェスをやっていた。

 

 

サカナクションが描く内省的な世界は終わらない。

 

続く「years」も「ユリイカ」に引き続きモニターの後ろで演奏する演出。

歌詞に出てくる「薄い布」が曲中に形を変えていくように、映し出された1本の細い線が様々な姿かたちに変わっていく。

「834.194」で表現している暗い深海と都会の喧騒の対比はこの曲のMVでも表現されているようだ。

 

ステージの映像は最終的に1本の線に戻り、糸のようにユタユタ揺れながら次の「ナイロンの糸」の演奏が始まる。

 

夜の川辺で垂れる釣り糸のように、オーディエンスも静かに揺れながら、聴き入りながらサカナクションが描く哀愁に浸っていた。

 

ここで「みんなまだまだ踊れる?」という一郎さんのお馴染みの台詞が炸裂。

それに続けられた「陽炎」で潜っていた深海から顔を出し、再び明るいダンスナンバーが彩るフェスらしいブロックに突入する。

 

、、、という訳ではなく、今度はアルバムの「DISC1」の世界観に染め上げていく。

その象徴がリードトラックの「忘れられないの」だった。

今までの代表曲とは違うスタイルでお茶の間まで浸透した話題の1曲。

MVのようにハンドマイクで自由に動く一郎さんに導かれるように、オーディエンスも縦ではなく横に揺れ、自由に音楽を受け取っているように見えた。

 

アルバムの曲順通り「マッチとピーナッツ」に繋げ、曲の最後のエフェクトが掛かった音が増幅して長時間鳴り響く。

その先で聴こえたのは「ワンダーランド」のイントロと大地を踏みしめるようなドラムの音だ。

 

音源ではイメージしていなかった、炎の特効がステージを彩る演出。明けゆく夜に待ったをかけるこの時間帯に沸々と湧き上がる会場の熱量を表しているようだった。

 

「ワンダーランド」の演奏を搔き消すようなアウトロから、今度はステージ前方にDJセットが並び、6年前の前作アルバムのオープニングを飾るインストナンバー「INORI」に繋げる。

サカナクション、というかNFらしい、深夜のクラブイベントのようなムードを幕張メッセの巨大なフロアに持ち込んでいく。

5人がMacBookを前に一列に並んだまま続けられたのは勿論「ミュージック」

DJセットから再びバンドセットに戻る最後のサビからは再び満場の大ジャンプ&大合唱。ロングセットのライブもいよいよクライマックスだ。

 

最後は2010年代の日本のロックフェスのハイライトを担ってきた「アイデンティティ」と「新宝島」で盛大にライブを締めくくった。

 

この2曲が多くのリスナーを連れて来た先にあった大型フェスの深夜のライブアクト。

バンドが80分で表現したかった今のサカナクション、そしてオーディエンスが望んでいたサカナクションのライブが限りなく近い所で交わっていたように感じた。

サマソニとサカナクションに共通する「二面性」を楽しむということ

80分の持ち時間で演奏したのは15曲。その15曲の演奏時間はそのうち70分。MCらしいMCはほとんど挟まず、持ち時間の大半を純粋な音楽で詰め込んだ深夜のサカナクションのライブ。

聴き入りもしたし歌いもしたし、色んな角度から踊らされまくった。これでこそ今のサカナクションだし、今が1番だと思えるライブだった。

 

 

いくら大物ロックバンドが出るからとはいえ、サマソニで1日遊び切った後の深夜の時間帯まで残っている人は限られていたと思うし、MIDNIGHT SONICだけ参加したお客さんも多かったと思う。

つまり、フェスとは言えどサカナクションが好きで新しい曲を知っている人が多くを占めていた空間だったのだろう。

 

そして、それぞれがマイノリティな一面も持ちつつ、ライブやフェスならではの楽しみ方、盛り上がり方も大事にしているオーディエンスが周りには沢山いたように感じた。

だから”盛り上がること”と”落ち着いて聴くこと”とを対立させるのではなく、どちらの良さも存分に味わうことが出来た。

 

「834.194」というアルバムも東京と札幌をコンセプトにバンドにまつわる「二面性」を表現した作品だった。

 

今出した「二面性」というワードで半ば強引に繋ぐけど、近年のサマーソニックではルールが云々だったりとか、邦楽と洋楽が断絶しているだとか、そんな話がよく飛び交っている。

 

そりゃあ多くの人が集まるイベントなのだから、多少なりとも参加者同士のセーフティゾーン(安全面も精神面も)が侵害されることはある。

だけど、どんなスタイルであれ、音楽を楽しんでいる光景には見ていても微笑ましいと感じる瞬間だって沢山あるし、そこに自分も混ざりたいと思うこともあるし、何でもかんでもケチをつけるものではないはず。白黒はつけるべき人がしっかりつけて欲しいと思う。

 

どっちの方が良い悪いとかではなく、各々で自分が”正しい”と思う基準を持って、色んなジャンルや楽しみ方の良いとこ取りが出来ればいいなと思っている。

そういう楽しみ方を突き詰めていきたいと改めて思えたのがこの日のサカナクションのライブ、そして今年のサマーソニックだった。

再来年以降も(来年も時期と名前を変えて)音楽にまつわる色んなジャンルやスタイルの架け橋であり続けて欲しい。

 

 

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